“寒試し”というのをご存知でしょうか?
寒試しというのは、江戸時代の農民が使っていた
1年間の天候を予測する方法です。
梅雨時の雨の具合はどうなのか、霜はいつ頃降りるのか、
気温の変化はどういう動きになるのか、といったことを予測することで、
種まきや苗植えをいつやるのがよいか、いつ収穫した方がよいのかといったことや、
天候の変化への対策をする時期を考えるのに使います。
旧暦の小寒~大寒までの気温変化から、立春以降の長期の気象予報を試す、
ということで”寒試し”と名付けられたそうです。
特に北陸、東北地方の農民が、冷害を回避する方法として使っていたんですね。
昔は作物が実らないことは、飢餓や身売りの元凶になっていたそうですから、
対策につながる天候の予測はものすごく熱心に研究されていたそうです。
その結果生まれたのが”寒試し”なんです。
それをこの間、マイファームの顧問を務め、
「スローでたのしい有機農業コツの科学」という本も出していらっしゃる
西村先生から直接やり方を習ってきました!
というわけで、寒試しのやり方を紹介します。
この方法を見て、「難しい」と思われた方は、読むのを飛ばしても大丈夫です。
寒試しはあくまで”予測”することでよりよい対策をしようというものなので、
必ずしもやらないといけないものではありませんので^^;
寒試しの測定 手順概要
寒試しをするにあたって、エクセルを使います。
気温データでグラフを作り、出来上がったグラフから予測していきます。
手順の流れはこうなります。
- 今年と過去3年分の小寒の始まりと大寒の終わり(立春の始まり)の日時を調べる
- それぞれ小寒から大寒まで1時間毎の気温を調べる
- 過去3年分のデータを移動平均したものと、今年の観測データをグラフ化する
- 二十四節気にあわせてグラフに刻み目を入れる
- グラフの比較から1年の気温を予測する
このようにすると、こんなグラフが出来るんですね。
(細かい作り方はまた別記事で説明します。)
データは自分で観測する必要はありません。
国立天文台と、気象庁からコピペでOKです。
データを作る前に、いくつか基礎知識がいるのでご紹介します。
二十四節気とは?
寒試しでは、「二十四節気」というものを使います。
これは、旧暦(太陰暦)で季節を表したもので、
1年を24等分して、節目ごとに名前を付けています。
区切りの名前は、このようになっています。
【春】
- 立春(りっしゅん)・・・2/4頃
- 雨水(うすい)・・・2/19頃
- 啓蟄(けいちつ)・・・3/6頃
- 春分(しゅんぶん)・・・3/21頃
- 清明(せいめい)・・・4/5頃
- 穀雨(こくう)・・・4/20頃
【夏】
- 立夏(りっか)・・・5/6頃
- 小満(しょうまん)・・・5/21頃
- 芒種(ぼうしゅ)・・・6/6頃
- 夏至(げし)・・・6/21頃
- 小暑(しょうしょ)・・・7/7頃
- 大暑(たいしょ)・・・7/23頃
【秋】
- 立秋(りっしゅう)・・・8/8頃
- 処暑(しょしょ)・・・8/23頃
- 白露(はくろ)・・・9/8頃
- 秋分(しゅうぶん)・・・9/23頃
- 寒露(かんろ)・・・10/9頃
- 霜降(そうこう)・・・10/23頃
【冬】
- 立冬(りっとう)・・・11/7頃
- 小雪(しょうせつ)・・・11/22頃
- 大雪(たいせつ)・・・12/7頃
- 冬至(とうじ)・・・12/22頃
- 小寒(しょうかん)・・・1/5頃
- 大寒(だいかん)・・・1/20頃
となっています。
“頃”となっているのは、旧暦(太陰暦)と新暦(太陽暦)で1ヶ月の長さが違うからです。
太陰暦は、月の満ち欠けの周期を1ヶ月とする方法で、
地球が太陽の周りを回る周期を1年とした太陽暦とは、“ずれ”が出てくるんですね。
日付だけでなく、”時間”もずれますので、
測定の時には○○日○○時まで確認する必要があります。
移動平均とは?
1時間ごとの気温を調べていくと、必ず気温差が激しいところが出てきます。
そうすると、上下の激しいグラフになりますよね。
そういう時に、うまく平均値をとって、グラフを滑らかにする方法が「移動平均」です。
時系列のデータをずらしながら平均をとっていく方法で、
金融の世界でも使う手法みたいです。
例えばこんな感じです。
A、B、C、D、E、Fと、1時間毎に測った6つの気温データがあるとします。
- A:8.5℃
- B:9.8℃
- C:9.4℃
- D:8.3℃
- E:7.9℃
- F:7.5℃
通常なら、A、B、C・・・とグラフにデータをかくところですが、
ここで3時間毎に移動平均をとります。
(A+B+C)÷3=B’
(B+C+D)÷3=C’
(C+D+E)÷3=D’
(D+E+F)÷3=E’
AとFは前後のデータがないのでそのままにします。そして
A、B’、C’、D’、E’、F
というデータをグラフにしていきます。
今回の「寒試し」では、過去3年分(2008年、2009年、2010年)の
1時間毎のデータを出して、それぞれの小寒の初めの時刻から大寒の終わりの時刻を合わせて平均し、さらに3時間毎に移動平均します。
これを「3年分の移動平均データ推移」として、
今年2011年の小寒から大寒の終わりをグラフを比較していきます。
大まかな作り方の説明は以上ですが、なんだか難しいですよね^^;
私もこれを理解して噛み砕くのに時間がかかりました。
小寒から大寒までのグラフを1年に見立てることで、
「今年は冷夏が来る」とか、「暖冬だ」といったことを判断しているんですね。
小寒の始まりから大寒の終わりまで、時間数にすると、どの年も709時間でした。
それを24で割った時間(今回の場合は29時間ごと)をX軸での刻み目すると、
今年の二十四節気に当たる気温差がわかります。
これを、今年のデータと3年分の移動平均データを比較して、
何をどのタイミングで植えるか、気候の変動にどう対策するか、
どれくらいで収穫するか、といったことを判断するわけです。
西村先生が言うには、さらに虫の状況を観察すると、
あわせて分析できるそうです。
虫は自然のことをよく知っているので、普段からどの虫がどんな気候の時にどういう行動するのか、常日頃から研究しておかないといけないですね^^;
次の記事で、エクセルを使って具体的にグラフを作る方法を紹介します。
次の記事:寒試しのグラフをエクセルで作る方法